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渡辺 龍三*
PNC TJ9601 98-004, 79 Pages, 1997/03
高速増殖炉の燃料被覆管の長寿命化を目指して、ステンレス管の内面にTi、外面にMoを配置させた傾斜機能ステンレス鋼円管の作製プロセスの確立を本研究の目的としている。燃料被覆管の形状・寸法および傾斜層の制御厚等の要件から、形状付与の自由度が高く微細な組成制御が可能なスラリーディップ技術を採用し、そのプロセス条件を研究してきた。これまで、傾斜層の設計指針、スラリーの調製条件およびディップコート層の組成制御条件などを明らかにしている。本報告書では主として、スラリーディップ法におけるディップコート層厚制御条件を検討した結果について述べる。ディップコートにより形成される膜厚は主としてスラリー粘度に依存するが、粉体分散性(形成組織の均一性を支配)およびスラリーの安定性からみて適正粘度が存在する。Ti粉、Mo粉、ステンレス鋼粉およびそれらの混合粉が安定分散するスラリー条件のもとに、スラリーの粘度および降伏値に依存するディップコート層厚を制御した。分散剤としてはTi粉、ステンレス鋼粉およびそれらの混合粉に対してはポリアクリル酸ナトリウム、Mo粉およびMo/ステンレス鋼混合粉に対してはヘキサメタリン酸ナトリウムが適しており、また、いずれの場合も結合材のポリビニアルコール(PVA)がスラリー粘度調整に有効である。低粘度(10mPas)スラリーについては、スラリーの安定性と形成膜の健全性の観点から、スラリー中の粉末濃度とPVA添加量のなす平面において適正な条件が規定される。適正スラリー条件下での最終膜厚は最大200mである。一方、スラリー粘度が比較的大きい(数100mPas)場合は、スラリーの安定性は良好であり、降伏値の制御も容易である。この場合には、分散性の良好な条件のもとに数10数100mの単位で傾斜層を形成することができる。なお、最終的な膜厚は、乾燥および焼結およびHIP処理などで決まるが、おおむね物質収支および緻密化率により算出される。